初めての外国人雇用◆外国人スタッフの人事労務管理Q&A集@

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このページでは、外国会社や外国人会社の人事労務管理について、わかりやすいQ&A方式で説明しています。

当事務所が更新している icon.mini.gif 日本で働く外国人に関するブログで、取り上げているトピックと連動しているご質問に関しては、ブログ記事のリンク先もご覧ください。(このQ&Aよりも詳細に解説しています。)  

 

icon.mini.gif 外国人雇用に関する、その他の記事は下記リンクをクリックしてご覧ください。

 

 icon.mini.gif 外国人社員の就労ビザ取得手続きについては、下記のページからリンクをご覧ください。

 

 


 

■ 外国人雇用のQ&A集@

お探しの情報がない場合は、icon.mini.gif 外国人雇用の困りごとQ&A集一覧 に戻り、こちらからも他のQ&A集を検索してください。

 

 

※ ご覧になりたい項目をクリックしていただければ文頭にジャンプします。

※  paper!.gifは、当事務所オリジナルの書式(日本語・英語版)が公開されているQ&Aです。

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 項 目

 質問内容

 

Q1

 

雇用契約書の作成について

paper!.gif今回、初めて外国人を正社員として雇用しましたが就業規則の英語版などがありません。当社のルールなどを理解して、問題なくいてもらうためにはどのような形で労働条件や会社のルールを説明しておけばいいでしょうか。 

 

Q2

 

英文就業規則の作成について 

paper!.gif我が社でも外国人スタッフが5名ほどと少しずつ増えてきました。これまでは全員に日本語の就業規則を渡してきていましたが、本当のところ、ちゃんと理解してもらえているのか不安です。外国人スタッフが大体何人くらいになってきたら英文就業規則を作成したほうがいいでしょうか。労働基準法などで何か決まりはあるのですか? 

 

Q3

外国人社員の社会保険加入拒否について

新たに採用した外国人社員が、掛け捨てになることを嫌ってどうしても厚生年金への加入を了解してくれません。一方、健康保険には入りたいと言い、会社としても困っています。彼が望んでいる健康保険だけ加入して、掛け捨てになる可能性が高い厚生年金への加入を避ける方法はありますか?

 

Q4

海外に住む家族を健康保険の扶養家族にいれる

新しく雇用した外国人社員が、母国にいる母親を健康保険の扶養家族にしてほしいと申し入れてきました。このようなケースは初めてなので、どのように手続きをすればよいのか教えてください。

Q5  外国人であることを理由にした給与額の減額  エンジニアとして新しく採用する外国人はまだ日本語が完全ではなく、業務上、上司や同僚社員がサポートしなければならない点が多いので、その点を考慮して、同じ職務を担当している日本人社員よりも低い給与額に設定したいと思います。このような措置は法的に問題はありませんか?

Q6

駐在員事務所の労災・雇用・健康・厚生年金保険加入 

当社は海外法人の日本駐在事務所という位置付で日本国内で活動をしています。こちらで雇用する外国人駐在員を日本の労災・雇用・健康・厚生年金保険に加入させたいのですが、日本国内で法人として登記していない駐在員事務所でも加入することができるのでしょうか。

Q7 

外国人社員に退職勧奨を行い退職させるときの重要ポイント

当社で雇用している外国人社員に対して本人の能力不足・業績不振により、退職勧奨を行い、本人がこれに応じたため退職させることになりました。退職手当上積金の一般的な基準や人事労務管理面での注意点を教えてください。

 

 

 



【Q1】

今回、初めて外国人を正社員として雇用しましたが就業規則の英語版がありません。当社のルールなどを理解して、問題なく働いてもらうためにはどのような形で労働条件や会社のルールを説明しておけばいいでしょうか。


【A】

初めて外国人スタッフを雇用する企業様や外国人スタッフが少数の場合、ボリュームの大きい就業規則を英文に翻訳するのがご負担になることも多いかと思います。

本当は、会社のルールや労働条件などが全て記載されている就業規則を、外国人の理解できる言語に翻訳し、ご本人に配布することが一番良いのですが、それが難しい場合は、まずは、労働条件の詳細や、会社がどうしても伝えておかなければならないルール(懲戒や服務規律)などをできるだけ最大限カバーした、「雇用契約書」を作成し、ご本人にお渡ししてはいかがでしょうか。

 

icon.mini.gif 雇用契約書や雇用契約書については下記のページで詳しく解説していますのでこちらをご確認ください。

※ こちらでは、外国人スタッフに対する雇用契約書のポイントも記載しています。

 

また、東京労働局のホームぺージでも、外国人労働者の受け入れの基本方針として、雇用契約書の作成を義務付けていますのでこちらもご覧ください。

 

 

 



【Q2】

我が社でも外国人スタッフが5名ほどと少しずつ増えてきました。これまでは全員に日本語の就業規則を渡してきていましたが、本当のところ、ちゃんと理解してもらえているのか不安です。外国人スタッフが大体何人くらいになってきたら英文就業規則を作成したほうがいいでしょうか。労働基準法などで何か決まりはあるのですか?


【A】

労働基準法第89条では、「常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し行政官庁に届けなければならない。」とは規定していますが、外国人スタッフ向けに、「●●人、外国人従業員を雇用したら外国語の就業規則を作成しなければならない。」とは定めていません。

 

とは言っても、本当は外国人を1人でも雇い入れた場合、その外国人のためにも、また会社のためにも、その外国人が理解できる就業規則の翻訳版を作成して本人に渡すのがベストです。

先ずは、外国人にとっては、日本で初めて働く場合は特に、自国の労働慣行や労働法と大きく違っている日本で、更に個々の会社独自に定めているルールを、外国語である日本語で100%理解してください、というのは酷な話しです。

 

事前に理解できる言語で作成された就業規則を読み、理解しておくことによって、その後の勤務がスムーズにいくことはもちろん、「知らなかったばかりに」起こる無用なトラブルを起こすことがありません。

 

一方、会社側にとっても、例えば、雇用している従業員に一番守ってもらいたい、会社独自の「服務規律」や、「こんなことをやってしまったら罰則がありますよ。」といった、「懲戒規定」なども必ず、外国人スタッフにも知っておいてもらわなければならないはずです。

 

ただ、確かに就業規則の翻訳については、時間も費用もかかり、会社にとっては負担になる作業であることは間違いありません。ですので、例えば、私から、「何人になったら英文就業規則を作られたほうがいいですよ。」と言うことはありませんが、今後、御社が、

 

  • 今いる外国人スタッフにずっと長く働いてもらいたい。
  • 今後も優秀な外国人スタッフを増やしていきたい。

 

というご希望をお持ちなのであれば、雇用されている外国人スタッフの人数に限らず、英文就業規則の作成は必ず必要な事であると思います。

それでも、どうしても、「今は英文就業規則を作成する余裕がない。」という企業様には、最低限、それよりもボリュームが少なくて済む、個々の外国人向けに作成する、「雇用契約書」(※外国語)の作成・配布をお勧めします。( icon.mini.gif Q1・英文雇用契約書についてのQ&Aも覧ください。)

この場合、「服務規律」や「懲戒」などの重要項目についても雇用契約書に追加して記載し、外国人スタッフに事前に周知しておくことが可能です。

 

icon.mini.gif 英文就業規則作成に関する詳細は、下記のリンクよりご覧ください。

 

 



【Q3】

新たに採用した外国人社員が、掛け捨てになることを嫌ってどうしても厚生年金への加入を了解してくれません。一方、健康保険には入りたいと言い、会社としても困っています。彼が望んでいる健康保険だけ加入して、掛け捨てになる可能性が高い厚生年金への加入を避ける方法はありますか?

 

【A】

健康保険と厚生年金保険は、二つで一つの「社会保険」であり、基本的にどちらか一方の保険には入るけれど、もう一方には入らない...と個人や会社が自由に選択することはできません。

【※】 

お互いの国の在留期間中に発生する保険料の二重払いを防ぐために、日本と”社会保障協定”を結んでいる外国の出身者の場合で片方の保険のみ加入、片方は加入しない(=自国の保険制度に加入を続ける。)という例外はあります。

 

また、日本で採用され日本にある会社で働く外国人は、日本人と同様、法律上定められている加入の条件に当てはまった場合、健康保険や厚生年金保険はもちろん、労災保険や雇用保険にも加入することが義務付けられています。

外国人ご本人や会社の選択で加入する、しないを決められるわけではないので、御社のほうで、この点を十分ご本人に説明していただき、加入を説得されるしかないかと思われます。

このときに、外国人ご本人が加入を嫌がっている原因の、保険料が掛け捨てになるという心配については、日本を出国時に請求すれば払った保険料の一部が戻ってくる、脱退一時金自国の社会保障制度との保険料金・加入期間の通算(※前述の、社会保障協定を結んでいる外国出身の社員の場合)について詳しく説明されると、外国人ご本人にスムーズに理解していただけるのではないかと思います。

 

「脱退一時金制度」や「社会保障協定」について詳しい説明は下記のページに記載しています。こちらをご覧下さい。

icon.mini.gif 外国人スタッフのための厚生年金について

 

 



【Q4】 

新しく雇用した外国人社員が、母国にいる母親を健康保険の扶養家族にしてほしいと申し入れてきました。このようなケースは初めてなので、どのように手続きをすればよいのか教えてください。

 

【A】

まず、日本の健康保険(ここでは、中小企業などが加入する旧政府管掌、現在は移管先の協会けんぽが運営する健康保険のことを指します。)では、被保険者(会社員本人)が扶養する一定の親族に対しても、扶養家族として健康保険を適用しています。

 

このことは、被保険者が外国人であっても、扶養する親族が海外にいる外国人であっても、健康保険法で決められている、扶養親族の条件に該当し、社会保険事務所から正式に認められば、扶養者として被保険者の健康保険に入ることができます。

※ 被扶養者に関する詳しい条件などは、社会保険庁のこちらのページでご確認ください。

 

では、健康保険法で、「被扶養者」として認められる親族というのはどのような人たちかというと、まずは、被保険者(外国人本人)がその親族の生計を維持している(=養っている)という前提で、

 

  1. 被保険者(外国人本人)と同居している場合
  2. 被保険者(外国人本人)と同居していない場合 

 

に分けて考えます。

今回のご質問のケースですと、母国の母親を被扶養者に、とのことですので、2.の「本人と同居していない場合」になります。

健康保険法では、「本人と同居していない親族」でも、被扶養者として認定する親族として以下の親族を挙げています。

 

【 本人と同居していなくても健康保険に加入できる親族 】

・ (本人の実)子
・ (本人の実)父母
・ (本人の実)祖父母
・ (本人の実)弟妹
・ (本人の実)會祖父母
・ (本人の実)孫

 

上記のように、本人の(実)父母は、同居していなくても(海外に住んでいても)、被扶養者として日本の健康保険に加入させることが可能です。

ちなみに、下記の親族については、本人との同居が絶対条件となり、外国人本人と同居をしていない場合は被扶養者になることはできません。

 

【 本人と同居していることが絶対条件の親族 】

  • (本人の実)兄、姉
  • 3親等内の親族
    例: 伯父、伯母、叔父、叔母、甥、姪、配偶者及び内縁の配偶者の連れ子、配偶者の父母や兄弟姉妹など

また、被扶養者に入れる親族に対してですが、日本人の被扶養者の認定と同様に、これらの被扶養者が、次の条件に当てはまっていることも必ず必要です。

 

【 被扶養者として認定される、親族本人に関する要件

  • 今年度の年収見込みが、年収130万円未満であること。                                 (昨年130万円超えていても、今年度に130万円未満となる見込みであれば可。)
  • 60歳以上、障害厚生年金の受給資格者などの扶養者の場合は年収180万円未満であること。

 

以上の条件を満たした上で、海外にお住まいの親御さんを日本の健康保険の被扶養者にいれるためには、下記の証明書などが必要になりますので、これらをご準備いただくことになります。

 

【年金事務所に提出する申請書類】

  • 本人が海外の親等の親族に送金を行っている記録                              (通帳のコピーなど)
  • 外国人本人の母国で発行される、本人と親族との続柄がわかる証明書                              (日本の戸籍にあたるもの。海外の場合、戸籍制度がないため、それにあたる被保険者本人との続柄がわかるような公的な証明書と日本語の翻訳文(例:扶養に入れる親族が妻子の場合は結婚証明書や出生証明書など、その他親族の場合は中国の場合で戸口簿など。東京都の年金事務所の場合、被保険者本人と扶養にいれる方の苗字が同じであれば必要ありません。

 

【 ご注意ください! 】

上記の、社会保険事務所に提出する必要な証明書については、管轄する年金事務所によって何を要求するか異なる場合があります。

海外にいる親族を被扶養者にする手続きを行う場合は、必ず事前に管轄の年金事務所の適用課に確認した上で進めてください。

※ 年金事務所・全国の管轄区域

 

なお、下記のページでも、更に詳しく説明していますのでご覧ください。

icon.mini.gif 外国人スタッフのための健康保険

 

 



【Q5】

エンジニアとして新しく採用する外国人はまだ日本語が完全ではなく、業務上、上司や同僚社員がサポートしなければならない点が多いので、その点を考慮して、同じ職務を担当している日本人社員よりも低い給与額に設定したいと思います。このような措置は法的に問題はありませんか?

 

【A】

外国人スタッフの給与・税金のページでも解説したとおり、単に、「外国人だから。」という理由だけで、給与額において、同じ内容の職種で雇用している他の日本人社員と差をつけることはできません。

なぜなら、労働基準法は(第3条)で、「使用者は労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金・労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはならない。」と定めているからです。

※ 違反した場合は、"6か月以下の懲役または30万円以下の罰金"という罰則規定もあります。

 

つまり、日本で外国人を雇用するときには、同じ職種・同じような雇用形態(正社員・パート等の区別)で働いている他の日本人従業員と全く同じ労働条件(給与・労働時間など)の下、雇用しなければなりません。

 

ただし、外国人だから、日本人だからという単純な理由からではなく、職種や能力、職責など客観的な理由から、他の日本人社員と給与面での差がつく場合はあるでしょう。

たとえば以下のような場合です。

 

  • 職種による差 例: 営業職と事務職など
  • 職務級による差 例: 会社が導入している賃金制度による職務級から発生する差
  • 能力や経験による差 例: 特に外資系企業などにおける年俸制など
  • 役職による差 例: 役職手当などの加算
  • その他、賃金システムの違いによる差 例: 年俸制や月給制など賃金制度の違い

 

上記のようなケースであれば、通常の日本人社員に対する給与額の決定方法に基づいて外国人社員の給与額を決定し、他の社員と差をつけることは問題ありません。

ただし、ご質問のように、単に、「日本語があまり上手ではないため、他の日本人社員のサポートが必要だから。」という理由で、同じ職種で雇用されている日本人社員と比べ、明らかに低い給与額を設定することは、前述の、労働基準法第3条(均等待遇)違反となる恐れがあります。

 

特に、エンジニアのような高度な専門的知識を持つ外国人社員は、そもそも日本語能力というよりも、その専門知識と能力を前提に採用され、入社している人材のはずです。

ですので、本人の能力や職種からではなく、「日本語がつたなく、業務上サポートが必要だから。」という理由だけで、給与面で明らかに他の社員と差をつけることは、かなり問題があるのではないかと思います。

icon.mini.gif 外国人スタッフのための給与の支払に関する注意点のページもご覧ください。

 

 



【Q6】

当社は海外法人の日本駐在事務所という位置付で日本国内で活動をしています。こちらで雇用する外国人駐在員を日本の労災・雇用・健康・厚生年金保険に加入させたいのですが、日本国内で法人として登記していない駐在員事務所でも加入することができるのでしょうか。

 

【A】

結論から言うと、御社が、外国法人の日本駐在員事務所であっても、労災・雇用・健康・厚生年金保険に加入することはできます。

まず、「外国法人の日本駐在員事務所」というものが、労災・雇用保険(合わせて、”労働保険”と呼びます。以下、”労働保険”と記載。)、健康・厚生年金保険(合わせて、”社会保険”と呼びます。以下、”社会保険”と記載。)の運用上、どのような位置づけにあるかを確認しておきましょう。

 

【 労働保険における駐在員事務所の位置づけ 】 

まず、労働保険について、労災保険に加入しなければならない事業所として、

 

  • 1人でも労働者を使用する事業主は原則、すべて加入

 

と定めていますので、外国法人の駐在員事務所でも、日本国内で労働者を雇用し、給与の支払が発生・源泉徴収を行うのであれば、 労災保険に加入しなければなりません。

次に雇用保険についてですが、こちらは、

 

  • 原則一人でも社員を雇用する事業所は法人・法人以外に拘わらずすべて加入

   (ただし、農林水産業の一部は、任意加入=加入してもしなくてもよい。)

 

となりますので、労働保険については、法人登記をしていない外国人駐在員事務所も問題なく加入対象となります。

 

【 社会保険における駐在員事務所の位置づけ 】

健康保険と厚生年金保険に強制適用(=法律上、必ず加入しなければならない事業所)となる事業所しては、まず、法人であること(例え代表取締役1名で設立されている株式会社などもこれに含まれます。)という条件があります。

 

外国法人の駐在員事務所というのは、外国為替管理法上、登記の必要がないため、いわゆる法人ではありません。では、駐在員事務所が社会保険に加入するためにはどのようにすればよいのか、というと、「任意加入」という形をとることが必要となります。

健康・厚生年金保険法では、法人の場合の「強制適用」と区別して、下記のような事業所が、自ら希望した場合に限り、「任意加入」を認める...としています。

 

【 社会保険の任意加入が認められる、法人以外の事業所 】

  • 製造業や土建業など、法律で決められた16種類の業種で、5名未満の従業員を雇用する個人事業
  • 第一次産業(農林・水産・畜産業)、接客業(旅館・料理店・飲食店・理容業など)、法務業(弁護士・税理士・公認会計士など)、宗教業(神社・寺院・協会など)                ※ 従業員数に関係なし。 

外国法人の駐在員事務所も、この任意適用事業所に準ずる位置づけとして手続きを行うことによって日本の社会保険に加入することができます。

ただし、日本国内での法人登記がある強制適用事業所や、法人登記がなくても日本国内での実績や位置づけを登記以外で様々に証明できる、上記、任意適用事業所と違い、外国法人の駐在員事務所で特に設立したばかりの事業所というのは、これまでの実績がないため、労働保険や社会保険に加入するための審査が厳しくなるのは確かです。

 

通常の法人や、日本国内の任意適用事業所の場合も、加入申請時には、法人登記簿謄本や営業許可証以外にも、労働者名簿や賃金台帳、事務所の賃貸借契約書の写しを始め、たくさんの書類が必要になりますが、日本国内に営業実績のない外国法人の駐在員事務所の場合は、このような必要な書類にプラスして、労働基準監督署・ハローワーク・社会保険事務所から、それぞれ以下のような提出書類を特別に要求されることになるでしょう。

 

【 労働基準監督署やハローワークから特別に要求される提出書類 】

  • 日本の法人登記簿にあたる、親会社(海外本国)で発行される、親会社の存在を証明する公的な証明書                                                 ※ 親会社が北米・ヨーロッパの場合は、宣誓供述書等、中国などの場合は営業許可証等で、必ず日本語の翻訳文も付けます。

 

  • 新規設立の場合、最低1回の源泉所得税の納税を行った証明となる所得税領収書

                                                   

  • 労災事故の発生に備えた、「外国の親会社と日本駐在員事務所代表者の間で取り交わされた使用者責任に関する覚書」                                         ※ 法人の新規設立であれば、ほとんど求められることがない書面ですが、駐在員事務所の代表者はあくまでも個人事業主扱いになるため、通常、課せられる法人としての使用者責任を親会社と駐在員事務所に担保させるために、このような覚書を要求されることがあるようです。

 

なお、上記の追加書類に関しては一例であり、実際に審査を行う管轄の労働基準監督署やハローワーク、社会保険事務所によって、要求する書類が異なる場合があります。

東京都内であっても、一部の都心にある行政機関以外は、特殊ケースである、外国法人の駐在員事務所の適用について慣れていないことが多いようです。

 

当事務所でも、「駐在員事務所の加入について、事業所を管轄する都内●●区の社会保険事務所で相談したが加入はできない、と言われてしまった。」という、お客様からのご相談を受けることがあります。

 

もしも、相談した行政官庁で、そのように言われてしまった場合、先ずは、その社会保険事務所などと交渉し、上部組織(社会保険事務所の場合は社会保険庁、労働基準監督署やハローワークは労働局に(労働)社会保険に加入できることを確認してもらった上で、加入に必要な提出書類や手続きの方法について教えてもらうといいでしょう。

 

 



【Q7】

当社で雇用している外国人社員に対して本人の能力不足・業績不振により、退職勧奨を行い、本人がこれに応じたため退職させることになりました。退職手当上積金の一般的な基準や人事労務管理面での注意点を教えてください。

 

【A】

本人の能力不足や業績不振などにより、会社から退職を勧め、これに社員が応じ、自らの判断で退職をする場合や、会社が公募した退職支援プログラムなどに社員本人が応募して退職する場合は、通常の、「自己都合退職」ではなく、「退職勧奨による退職」という取扱になります。

この場合の社会保険や退職に関わる手続きについては、基本的に社員が外国人であろうと日本人であろうと同じです。

下記は、退職勧奨による退職について、将来の労使トラブルを防ぐための重要ポイントです。

 

【 退職勧奨による退職手続きを行うときの重要ポイント】

 

■ 将来の労使トラブルを防止するためにも、「退職合意書」を作成し、署名・保管をしておく。

将来発生するかもしれない、退職理由や退職条件に伴うトラブルを防ぐためにも、「退職合意書」を作成し、今回の退職が解雇ではなく、本人が退職勧奨に応じた円満な退職であることや退職時に支払う退職金やその他の条件について明示し、社員に十分説明した上で署名し、双方1通ずつ保管しておくことが重要です。

 

■ 必要があれば退職金の上積みや再就職支援プログラムなどを提示し、社員の退職後の不安をできるだけ少なくする。

外資系企業や大手企業では、退職勧奨に応じる社員に対して、再就職支援プログラムとして退職金の上積や再就職支援会社【退職後、人材紹介や面談トレーニングなど再就職支援のための各種プログラムを提供するコンサルタント】の支援プログラムをまとめて提供するケースが殆どです。

 

退職金上積金の額については、会社の資力や規模によって様々ですが、一般的な外資系企業の場合、3ヶ月から長くて2年程度の月収および年収額を上積み分として支払うことが多いようです。

 

※ 退職金上積について

退職勧奨による退職の場合、通常の自己都合による退職と違い、雇用保険の失業給付が3ヶ月前倒しで給付開始となります。また、社員本人のそれまでの雇用保険の加入期間にもよりますが、おおむね自己都合退職に比べて給付期間も長くなります。

そういった事も踏まえて、雇用保険の失業給付が給付される期間は、雇用保険から給付される金額の不足分をカバーする方法によって、会社が支出する退職金上積み分の負担を軽くすることもできます。

 

■ 雇用保険の離職証明書【離職票】に会社が記載する退職理由にご注意ください。

退職勧奨による退職の場合、自己都合退職に比べて、雇用保険の失業給付については、給付期間や給付開始時期など社員にとって有利になることは前述のとおりです。

退職時に会社が作成する離職証明書【離職票】には、離職理由を一覧から選んで記載する欄がありますが、この離職理由については必ず、

 

「事業主からの働きかけによるもの/希望退職の募集又は退職勧奨(理由を記載)」

 

を選んで記載してください。

会社が申告する退職理由によって退職する社員の失業給付の額や開始時期に大きな影響があります。

 

icon.mini.gif 当事務所では、再就職支援プログラムや、退職合意書の作成などについてご相談をお受けしております。こちらの、「お問い合わせ方法について」のページをご覧ください。

 

なお、下記については、外国人社員を退職させる場合に特有の重要ポイントとなります。

 

【 外国人社員が退職するときに、会社として留意しておきたいポイント 】

 

■ 退職後に日本に残る外国人社員が次の就職先を決めずに退職する場合には、現在持っている就労ビザの有効性について説明しておく。

次の就職先を決めずに退職する外国人社員については、現在持っているビザ【「永住」や「日本人の配偶者等」は除く。】が就労系の「人文知識・国際業務」や、「技術」などの場合、会社を退職し社員としての身分を失うことによって、その失業期間は、現存のビザで許されている日本に在留する資格を一時的に失ってしまうことになります。

 

ただし、入国管理局では、近年の不況による就職難を考慮して、外国人労働者が、自分自身の意思による自己都合退職する場合は別として、会社都合による退職勧奨・解雇などによって失職した場合については、日本国内で再就職する意思を持ち、求職活動を続けている限り、少なくとも現在保持している在留期間内の在留を認め、また、その在留期間が切れても事前に申請を行えば、一定期間の在留期間の更新を特別に許可する対応を行っています。

 

外国人社員にとって一番心配なビザについては、退職後の手続きや入国管理局の対応など十分で正確な情報を事前に伝え、社員の不安を取り除いておくことが大切です。

 

 

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