ここでは、社会保険労務士の立場から外国人を雇用した場合の賃金の支払い方や給与計算方法の注意について解説しています。
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外国人スタッフに支払う給与の決定方法
外国人を初めて雇用する企業様の場合、下記のような疑問をもたれることが多いようです。
- 貨幣価値が大きく違う国出身の外国人を雇用する場合、どのように給与額を決定すればいいのかわからない。
- まだ日本語があまりできないので、業務をこなす上で完全ではない。能力が向上するまで他の全く同じような仕事を担当している日本人従業員よりも給与額を下げてもかまわないか。
外国人スタッフに対して給与を設定するとき(特に日本人従業員に比べて低額な給与を設定する場合)には次の項目をよくご覧になって、労働基準法や最低賃金法違反にならないよう、また外国人の就労ビザを申請・期間更新をする上で、給与額が原因で申請が不許可(=就労ビザがおりない・更新が許可されないこと)にならないよう十分お気をつけください。
@ 「労働基準法」違反にならないようにしましょう。
労働基準法(第3条)は、「使用者は労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金・労働時間その他の労働条件について差別的取扱いをしてはならない。」と厳しく定めています。
つまり、日本で外国人を雇用するときには、同じ職種・同じような雇用形態(正社員・パート等の区別)で働いている他の日本人従業員と全く同じ労働条件(給与・労働時間など)の下s、雇用しなければなりません。
たとえば、上記のような、「日本語能力が向上して日本人と全く同じように働けるまで、同じエンジニアとして働いている日本人の給与は月30万円だが、外国人の場合は月20万円に設定しよう。」といった給与設定をした場合には、労働基準法に決められている、「均等待遇の原則」に違反したとして、会社側が罰則を科されることもありますので注意が必要です。(6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金/労働基準法第119条)
A 「最低賃金法」違反にならないようにしましょう。
「最低賃金」とは、「労働者が人間的な最低限の生活をするために定めた賃金の基準」(労働基準法第1条,最低賃金法第1条)として、最低賃金法という法律によって決められている、賃金額の下限(最低額)基準です。
最低賃金には、●地域別最低賃金 ●職種別の2種類があります。
職種別最低賃金が適用されるのは、鉄鋼業や産業機械・出版・小売などの業種(但し、18才未満・65才以上・就職後6ヵ月未満の者など、その対象から除外される方もいます。)で、職種別に最低賃金額が決められている労働者で、一方、地域別最低賃金が適用されるのは、職種別最低賃金が適用される労働者以外すべての労働者に対してです。
東京都の地域別最低賃金は現在766円(2008年10月19日から発効)であり、それぞれの道府県によって最低賃金額は異なります。この最低賃金法に決められた最低賃金を下回る賃金額を設定したとしても(たとえ外国人本人がそれを承認したとしても)、その賃金額は無効(=法律上、有効でないこと)となり、会社は、最低賃金法違反をしたとして、本人に最低賃額との差額を支払わなければなりません。
なお、最低賃金の計算をする上で、次の手当は賃金額に含めることはできません。
下記に記載した手当はすべて除外した上で、その労働者の賃金額を計算し、最終的な額が最低賃金額に届くか、または最低賃金額をクリアしていなければいけません。
◆ 最低賃金額の計算から除く手当
- 皆勤手当・通勤手当・家族手当
- 臨時に支払われる賃金
- 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金
- 残業手当・休日・深夜勤務手当
※ 参考ページ
・ しっかりマスター最低賃金法パンフレット(東京労働局) ※ わかりやすくお勧めの資料
・ 中小企業の賃金,退職金事情(東京都労働相談情報センター)
B 就労ビザ申請・次回の就労ビザ更新に、「不許可」とならない適正な給与額を決めましょう。
外国人を雇用するときに必要な、就労ビザ(=在留資格)を申請するとき・在留期間の更新申請をするときには、申請書類として外国人との間で取り交わした雇用契約書を入国管理局に提出しなければいけません。
入国管理局が就労ビザ(=在留資格)を許可するかどうかの審査を行う場合、この雇用契約書に記載された労働条件・賃金額が適正であるかもチェックします。
日本国内にある企業が外国人を雇用する場合に許可される在留資格(※詳細は「就労ビザの基礎知識」のページをご覧ください。)である、「人文知識・国際業務」、「技術」、「企業内転勤」、「技能」などで就労ビザの申請をする場合、会社は外国人との間に、その会社が同職種・同等内容の職務で雇用する他の日本人労働者と同じ報酬額で、雇用契約を結ぶことが必要となります。
※ 参考ページ
・ 就労ビザ申請についての困りごと・Q&A集A/Q12 就労ビザ申請に必要な給与額
外国人スタッフに給与を支払うときに注意すること
賃金支払いの5原則を守りましょう。
これは日本人従業員に対しても全く同じことが当てはまるのですが、外国人に賃金を支払う場合にも労働基準法で決められている、下記のような、「賃金支払いの5原則」という原則があります。
この原則は日本人に対してはもちろん、外国人に対しても平等に守らなければいけない原則です。
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全額払いの原則 法律で給与から控除することを許されている場合(所得税や住民税の源泉徴収・ 社会保険料の本人負担分控除など)を除き賃金は全額払いしなければならない。 |
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通貨払いの原則 賃金は現金で支払わなければならない。商品券や会社の商品などで支払うことは できない。 |
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直接払いの原則 賃金は本人に直接支払わなければならない。但し、家族が代理として受け取る 場合は可能。 |
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毎月1回支払いの原則 賃金は毎月1回支払わなければならない。 例外:残業代、賞与など |
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一定期日払いの原則 賃金は、毎月●日に支払う、というように支払日を特定しなければならない。 「毎月第3金曜に支払う。」というような、毎月●日なのか確定しないような決め 方はできません。 |
上記、「賃金支払いの5原則」のうち、「@賃金全額払いの原則」の例外として、以下の場合は賃金から控除してもかまいません。
ただし、それ以外の項目を賃金から勝手に控除してしまうと、労働基準法第24条違反となりますので十分お気をつけください。
@ 賃金からの控除ができるもの(※労働者本人の同意は不要)
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所得税、住民税などの税金
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社会保険料(雇用・健康・厚生年金などの保険料)
A 賃金からの控除はできるが、それぞれ労使協定を結ぶことが必要なもの
- 社員旅行の積立金や社友会費
- 社内預金の積立金
- 給与の銀行口座への振込 ※ 本人の同意(口頭でも可能)が必要
賃金の設定方法や税金・社会保険料の控除などについて外国人によく説明しましょう。
日本と外国の労働慣行や法律は大きく違います。
日本で当たり前だと認識している所得税を始めとする税金や社会保険料の控除、また会社が独自に規定する給与規程などについては、事前に(雇用契約を結ぶ前のタイミングがベストです。)外国人スタッフに十分説明をして、ご本人に納得しておいてもらえば、将来の労使トラブルを未然に防ぐことができるはずです。
初めて来日して日本の企業で働く外国人従業員に対しては、後々のトラブル防止策としてはもちろん、何より外国人本人に安心して働いてもらうために、こういった待遇面に関しては特にきめ細やかな説明やケアが必要です。
@ 源泉徴収(所得税)についての説明
所得税の控除については、・累進課税であること ・外国人の給与給与総額から控除される大まかな税額なども事前に説明しておいたほうがいいでしょう。
家族を同行しているケースはもちろんですが、自国に家族を残し単身赴任してきているような外国人スタッフの場合にも、被扶養者がいる場合、減税のために必ず会社側がよく説明して被扶養者の届出を行ってください。
A 源泉徴収(住民税)についての説明
外国人が、毎年1月1日現在で外国人登録をしている市区町村に収める住民税に関しては、@の所得税と違い、前年の所得に対して課税されます。
つまり、2007年8月に来日し、9月に日本国内にあるA社に初めて雇用された外国人従業員の場合、9月〜2008年(2007年の住民税額が決定する)までは住民税が発生しませんので、その間、住民税の控除はされませんが、2007年分の所得が確定し住民税が確定する2008年6月頃から2007年分4ヵ月分の給与総額に課税された住民税の賃金からの控除が始まります。
所得税の控除だけではなく、翌年から住民税の控除も開始されること、住民税の大まかな予想額なども雇用契約を結ぶ際に、外国人スタッフに対して説明しておく事は、後々、「手取り額が最初の話しと違う。」といった、労使トラブルを避けられるのでとても重要なことです。
B 社会保険料の控除に関する説明
雇用保険や健康・厚生年金保険に加入させる外国人スタッフに関しては、これら社会保険の利便性(失業・病気の場合の保障)をよく説明し、加えて下記の点も付け加えて納得してもらうのが大切です。
- 各種法律で決められている強制加入に対しての保険料であること
- 保険料は従業員と会社側で折半負担していること
外国人スタッフの社会保険や、厚生年金の脱退一時金制度など外国人労働者に特化した国の各種社会保障制度については下記のページで詳しく説明していますのでこちらもご覧ください。
※ 参考ページ
C 賃金の設定方法に関する説明
外国人スタッフと会社の二者間だけで取り交わされる雇用契約書だけではなく、会社で規定している給与規程や就業規則なども明示して、賃金の決定方法や今後の昇給の可能性などについても事前に詳しく説明しておきましょう。
労働条件をきちんと事前に明示することによって、外国人スタッフが持っている不安や小さな不満をできるだけ取り除き、彼らに気持よく働いてもらい、持っている能力を最大限に活かしてもらうことが将来、会社にとって大きなメリットとなるはずです。
外国人スタッフに対する源泉徴収(所得税・住民税)の処理
「居住者」と「非居住者」・「永住者」と「非永住者」 の区別によって、課税税率が異なります。
外国人スタッフに給与を支払う際の源泉徴収の課税方法は、下記の区別(所得税法)によって、税率が決められています。課税される税率を求めるためには、まずは外国人従業員の個々の状況によって、以下のように区別することから始まります。
@ 外国人スタッフが、(居住者)か(非居住者)であるかどうかを区別
A 更に(居住者)の場合は、(永住者)又は(非永住者)に区別
※ この場合の(永住者)とは、入管法でいう在留資格の「永住者」とは全く意味が違いますので ご注意ください。
具体的な区別については、下記のようになります。
@ (居住者)か(非居住者)の区別
| 区 別 | 所得税法の定義 | |
| 居住者 |
日本に住所がある、または現在まで引き続 き1年以上住所がある者 |
更に ・永住者 ・非永住者 に区別
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| 非居住者 | 居住者以外の者 |
- |
A 居住者の内、(永住者)か(非永住者)かの区別
| 非永住者 |
日本国籍を保持していないことと同時に、過去10年の期間内で、 日本国内に住所または居所を有していた期間が合計5年以下 である者 |
| 永住者 | 上記、非永住者以外の者 |
B 給与計算時に控除する税率
| 税 | 区別 | 課税される所得等 | 税 率 |
| 所得税 |
居住者で 非永住者 |
給与、賃金、賞与など日本国内で支払 われた報酬、及び親会社などから賃金 として送金された所得に課税される。 |
日本人社員 と同様 |
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居住者で 永住者 |
すべての所得に課税される |
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| 非居住者 | 日本国内で支払われた所得 |
原則20% 但し、短期 滞在者 免税制度 あり。 |
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| 住民税 | 居住者 | 日本国内で支払われた所得 |
日本人社員 と同様 |
| 非居住者 |
課税されない。 ※ 住民税は毎年1月1日時点で外国人 が住所をおく市区町村役場か前年の 所得に基づいて請求されるため、その 年の1月1日に日本国内に住所がなかっ た場合(=来日していない、学生だった ため所得はなかった等=)はその年の住民 税の課税の対象とはなりません。 |
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※ 短期滞在者免税制度 とは?
「非居住者」の場合、日本での勤務で得た所得に対して、20%の所得税が控除されるのが基本です。ただし、外国人の出身国である国が日本と別途、租税条約を締結しているような場合(対米国など)は、このような「短期滞在者」に対して、課税が免除されることもあります。
詳細は、国税庁、「源泉所得税(租税条約)関係」のページをご覧ください。
英語の給与明細作成に必要な、和文英訳単語リスト
外国人スタッフを雇用したら、必ず、外国人ご本人に理解できるよう、英訳した給与明細(Payment slip)を配布して下さい。
特に初めて日本で給与を受け取る外国人にとっては、給与額や各種社会保険料・税金の控除など給与明細を見ただけではわからないことが多いと思いますので、明細について、人事や給与の担当者の方からよく説明してあげればどうでしょうか。
ここでは、給与明細の英語版作成に必要な単語をリストにまとめてあります。
よろしければ参考になさってください。
若松絵里社労士・行政書士事務所/給与明細作成に必要な単語リストはこちら
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