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2023年1月更新
このページでは、外国人社員を雇用するときに必要な英文雇用契約書の作成方法について説明しています。
※ ご覧になりたい項目をクリックしていただければ該当項目に移動します。
外国人の採用を決定したら、日本にすでに在留している留学生や中途採用の外国人、または今はまだ海外にいる外国人かにかかわらず、彼らに対して労働条件を通知するか、または雇用契約書の取り交わしをしなければなりません。
ちなみに、雇用契約書(または労働条件通知書)を雇用主が一方的に作成して、単に外国人に交付するだけでは十分ではありません。
特に、日本で働くことが初めての外国人に対しては、より丁寧に日本の労働法・労働慣行や、加えて御社の労働条件を説明し、納得してもらった上で、雇用契約書を取り交わし、労使双方ともにサインをした契約書の原本をお互いに保管しておくことが重要です。
こうした対応が、後々発生するかもしれない、無用な労使トラブルを未然に防ぐために大切なのです。
まずは、雇用契約書を作成するときの留意点として以下のポイントを確認してください。
労働基準法や労働契約法など日本の法律に沿った、内容に過不足のない雇用契約書を作成・交付して、外国人に正しく理解してもらうこと。
日本の労働法に沿った雇用契約書とは、具体的にどのようなものなのか、どのような内容を盛り込めばいいのかについては、後述で解説しますが、重要なポイントの一つに、「雇用契約書の内容を本人に正しく理解してもらう」ということがあります。
そのためには、雇用主や採用担当者が本人に対して十分な説明を行う、また、もし、そうした説明だけでは不十分な場合、採用後の無用な労使トラブルを避けるためにも、日本の法律や制度などに関する、わかりやすい参考資料なども活用して外国人の理解を確実にしておく必要があります。
外国人本人が理解できる言語(できれば外国人の母国語で。難しければ一番ポピュラーな英語)で作成する。
外国人のスムーズな理解を得るためには、本人の母国語で雇用契約書を作成するのがベストです。
厚生労働省が英語を始め、中国語やベトナム語など8カ国語(2023年1月現在)による、「外国人労働者向モデル労働条件通知書」の様式を公開しているので、こうした様式を利用するか、または(外国人が英語を理解する場合)、御社の実情にマッチした、公用語として最も一般的な、英語版の雇用契約書の様式を作成して交付するといいでしょう。
ただし、その場合は、英語を外国語として理解する外国人のために出来るだけシンプルでわかりやすい、こなれた英文で作成してください。
労働条件を明記した雇用契約書の詳細を本人に説明し、納得してもらい、労使双方のサインを交わした後に就労ビザの申請手続に入る。
雇用契約書の取り交わしによる労働条件の確認作業を怠ったまま、就労ビザの申請手続きを先行させてしまい、就労ビザが許可された後、いざ入社という段階で、はじめて外国人が労働条件の内容について異議をとなえ、最終的に入社を辞退されてしまった...というケースが実際にあります。
このようなことにならないよう、就労ビザの申請手続きが必要な外国人を採用する場合は、最初に雇用契約書を取り交わし、労使双方の合意を確定した上で就労ビザの申請手続きに入る、という手順を踏むことが重要です。
以上、まずはこの3点のポイントを踏まえた上で、実際にどのような内容の雇用契約書を作成して外国人に交付するかを解説していきます。
使用者となる企業の皆様に理解していただきたい大原則としては、外国人であっても日本国内の事業所で働く限り、 労働基準法・労働契約法・最低賃金法・労働安全衛生法・労働者災害補償保険法などの労働関係の法律や、健康保険法・厚生年金保険法などの社会保険関係の法律は日本人に対するのと同じように外国人従業員にも平等に適用される、という点です。
つまり、基本的に労働条件については外国人とはいえ、待遇や労働条件など他の日本人従業員に対するものと全く同等に処遇しなければならないのだと理解していただければ、外国人の雇用管理を行う上で間違いはありません。
厚生労働省は以下のような、外国人を雇用する際のガイドラインを定めていますのでこちらも確認してください。
外国人雇用はルールを守って適正に *2022年4月版(厚生労働省)
これらのガイドラインには、企業が外国人労働者を雇用するとき注意しなければならない項目として、
などを定めています。企業が外国人を雇用するときには、この厚生労働省が定めているガイドラインを守るように努めなければならず、このガイドラインの中にも「雇用契約書を作成して外国人本人に明示すること。」ということは、明確に規定されています。
雇用契約書の作成見本については、厚生労働省が英語版を始め、日本語が並記された多言語版(2022年5月現在・13か国語)を公開しています。
このサンプル版は、労働基準法などで決められている、会社側が労働者に明示して書面で交付しなければいけないという最低限の項目をカバーしているものです。
外国人労働者の理解を得るため・将来の労使トラブルを防ぐためには、恐らく不足する部分もあるかと思いますので、このサンプル版をそのまま外国人に交付するだけではなく、御社の実情にあったプラスアルファの項目も追加して過不足のない、労使トラブルを防止できる雇用契約書を作成してください。
たとえば、以下のような項目についても、追加するか、または別紙として一個の独立した契約書を作成することも検討します。
■ 入社時の秘密保持誓約書(Nondisclosure Agreement)
入社時に、前職(転職前に在籍していていた企業)における秘密情報保持義務の確認や、退職後の秘密保持義務までを詳細に規定しておく。
秘密保持契約書の基本については、経済産業省から以下のようなわかりやすい資料が公開されていますので参考にしてください。
・ 各種契約書の参考例・秘密保持契約(経済産業省公開資料)
■ 労働者本人の詳細な職務記述書(Job Description/ジョブ・ディスクリプション)
社員が行う個々の職務について詳細に記載したもの。大手日系企業や外国企業では一般的な書面です。以上このような基本の雇用契約書を補完する契約書や、補足書類を作成し、雇用契約書と同様に雇用する外国人社員のサインをもらっておくといいでしょう。
労働基準法(第15条1項)では、従業員を新たに採用したときには、雇用契約書または労働条件通知書で、書面により、労働者に通知しなければならない項目として以下のようなものを規定しています。
◆ 絶対的明示事項
雇用契約書に必ず記載しなければならない項目
以下①〜⑤については必ず書面(ファックス・電子メール・SNS含む/ただしこれらの方法の場合、印刷が可能な添付ファイルでの送付が必要)で明示しなければなりません。
① | 労働契約の期間 |
② | 就業の場所・従事する業務に関する事項 |
③ | 始業・終業の時刻・時間外労働の有無・休憩時間・休日に関する事項・2交代制で就業させる場合の就業時転換に関する事項 |
④ | 賃金額・計算や支払い方法・締切日・昇給に関する事項 |
⑤ | 退職に関する事項 (解雇の事由を含む) |
◆ 相対的明示事項
就業規則などにより、規定がある場合は必ず記載しなければならない項目
以下の項目については、必ずしも雇用契約書(書面)に記載して労働者本人に渡す義務はありません。
ただし、就業規則などにより、会社に関連する規定がある場合、雇用契約書などの書面、または何らかの方法(口頭でも可・該当する項目が記載されている就業規則を渡すことでも可能)によって、労働者に伝えることが必要です。
ちなみに、以下の項目に関連する規定が会社に存在するのであれば、絶対的明示事項と同様に文書にして渡しておいたほうがより効果的な雇用契約書となります。
⑥ | 退職金支払いの規定がある場合、その規定が適用される労働者の範囲や退職金の決定・計算・支払方法・支払時期 |
⑦ | 退職金以外の臨時的な賃金(慶弔金など)・賞与・最低賃金額に関する事項 |
⑧ | 労働者に負担させる食費・作業用品・その他に関する事項 |
⑨ | 安全衛生に関する事項 |
⑩ | 職業訓練に関する事項 |
⑪ | 災害補償や業務外の傷病扶助に関する事項 |
⑫ | 表彰・制裁に関する事項 |
⑬ | 休職に関する事項 |
以上の、「絶対的記載事項」または「相対的記載事項」について、雇用契約書に記載漏れがあると、会社側には労働基準法の義務違反が発生します。
まずは、これらの項目を全て完全に明記した雇用契約書を作成することが重要です。
チェックポイントの2点目は、雇用契約書の内容が現在の最新の法律に適合しているかどうかということです。
雇用契約書や就業規則の記載事項に関連する法律は近年、改正があったものだけでも、たとえば、
など数多くあり、これらは毎年のように、なにかの法律が改正されています。
また、改正までされていなくても、時代の流れに伴い、裁判例や通達(行政が法律に補足して発する行政解釈や指導など。法律に準ずる効力を持ちます)などが新しく発効し、解釈が変っているものもあります。
これらをそのまま放置して、最新の法律に適合しない雇用契約を締結し続けていると後々、労使間トラブルが起きてしまったときに、誤った雇用契約書を作成・交付した会社側に損害賠償責任が発生するリスクも考えなければなりません。
したがって、企業が雇用契約書(就業規則を含む)を作成するときには、その内容が現在の最新の労働諸法令にマッチしたものになっているかどうか、弁護士や社会保険労務士などの専門家にチェックしてもらうことも検討してください。
次に、トラブルが起こりやすい事項について、きちんと具体的・明確に記載されているかということも大切です。
以下の項目は規定が具体的・明確に定められていない場合、その適用をめぐって判断があいまいになり、後々トラブルになることが多い要注意項目です。
雇用契約書を作成したら、必ず、これらの項目は注意深くチェックして労働者にとって、わかりやすく容易に理解できる表現になっているかどうか確認してください。
前出のポイント1・「絶対的記載事項」の一つに「従事すべき業務の内容」 があります。
この項目に関しては、職務記述書(Job Description・ジョブ・ディスクリプション)として、新規採用者の職責や会社が期待する業績レベルなどを別途、別紙に詳細を記載して交付しておくといいでしょう。
最近では日本でもジョブ型雇用の導入が増加してきていて、職務記述書の交付は一般的になっているようです。特に外資系企業においては、入社時や人事評価の際にその都度作成され、交付されるものです。
職務記述書は、これを基に人事評価が行われ、外資系企業では珍しくない、中途採用者の能力不足による退職勧奨に関する労使トラブルの解決などにも後々大きく関係してくる重要な書面です。
ですので、英文雇用契約書とセットで作成し、交付しておくといいでしょう。
5点目として、試用期間(Probation Period)についての規定を明確にしておく事も重要です。
たとえば、これも外資系企業ではよく見かける規定ですが「試用期間中に本人の業績(Performance)が会社の期待していたレベルを下回った場合には本採用を行わない。」などの規定などがある場合には、それも予め明確に記載しておきます。
ただし、雇用契約書にこうした内容を記載したとしても、試用期間中の解雇を含め、解雇は客観的に合理的な理由がなければ行うことはできません。
あらかじめ雇用契約書に記載しているからといって、無条件で試用期間中に安易な解雇をすることは出来ないので、この点については注意してください。
外国人労働者向け・労働条件通知書(厚生労働省公開版)
厚生労働省は、外国人を雇用する事業主向けに8か国語(英語・中国語・韓国語・ポルトガル語・スペイン語・タガログ語・インドネシア語・ベトナム語/2023年1月現在)による、労働条件通知書のモデル版を公開しています。
このようなモデル版を利用して、外国人用の労働条件通知書や雇用契約書を作成することも可能です。
・外国人労働者向モデル労働条件通知書(厚生労働省)
厚生労働省のモデル版は、労働基準法で規定している、最低限記載しなければいけない項目をもれなくカバーしているので、各項目を自社の規則に応じて訂正・加筆した上で、そのまま使って問題ありません。
ただし、どうしても伝えておきたい、自社独自の服務規律などがあれば、それらも追加しておくといいでしょう。
このような対応は、将来の労使トラブルを防ぐ上でも、また、外国人社員にとっても、会社のルールをスムーズに理解できるという点で手助けになるはずです。
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